週に1日、自分だけの学びをデザインする「ワールドシフト」とは?
PROFILE
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数学科教員
寺井 伸太郎
明誠高校数学科教員、ワールドシフト推進室室長、総務部部長。技術職や営業職として勤務したのち、2007年に明誠高校へ着任。学校の中心的役割を担っている。ワールドシフトでは、プログラムの土台づくりを牽引してきた。
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社会科教員
岩本 むぎ
明誠高校社会科教員、フリーランスのスクールデザイナー。2025年度よりワールドシフト推進室 スーパーバイザー(SV)として、授業の設計から実施までを中心となって進める。現在は週3日益田に通い、東京との二拠点生活を実験中。「越境する働き方」を体現する一人。
全8回にわたり、明誠高校の今と未来を発信するWEBマガジン「フォーカス明誠」。第3回は、明誠ならではの取り組みである「ワールドシフト」について、立ち上げからプログラムの実施まで関わっている寺井先生と岩本先生にインタビューしました。昨年度始動した生徒自身が学びをデザインする「ワールドシフト」とは、どんな時間なのでしょうか?
1日の学びをデザインするワールドシフト
ーーーまず、ワールドシフトとはどのような取り組みですか?
寺井:自分のやりたいことをもとに、やることを自分で選択して、丸一日の学びをデザインするような授業です。なので、毎週金曜日は英数国社理のような通常授業はなく、丸一日ワールドシフト。高校生にもなると「私はもっと将来に向けて専門的な勉強をしたい」という生徒も出てきます。そこで必修の授業のコマを抑えて、丸一日あいた金曜日に「自分の学びを自分でデザインしてみよう」となったのがワールドシフトです。実際に学校の外に出て学ぶ、たとえば保育士という将来の夢に向けて保育園に学びにいく生徒もいます。あるいは、部活動のための筋トレで自分なりに工夫したことを記録したり、テスト前の期間は勉強時間に使ったりする生徒もいます。

ーーー岩本先生は昨年度から明誠高校に関わっているそうですね。
岩本む:そうですね。東京と益田の二拠点生活をしながら関わっていて、主に地域との連携に注力しています。以前東京で教員として働く中で、どうしても見栄えを気にしてしまう「探究」というものに疲れてしまった自分がいました。このワールドシフトは、「探究」というよりも、「生きる」ことに主眼を置いていると思います。自分で選択して、ちょっと考えて、挑戦して、失敗してっていう、本当に「生きる」を取り戻すみたいな。ただ学校と家、学校と寮の往復をするのではなく、益田というフィールドの中で揉まれて挑戦していって欲しいです。
ーーーワールドシフトの活動の中で発表もするんですか?
寺井:1・2年生は、まず夏休み前に生徒同士での中間発表を行います。夏休み明けに教員または保護者に対してのプレゼン型の面談(※注)をする。それを踏まえて後期の活動を進めて、3月に最終発表会をして、1年間を振り返るような形です。また高校3年生は、進路も踏まえた1年間の活動になり、1月の最終発表は卒業前に後輩たちに向けて行う形にしています。

※【プレゼン型面談】
明誠高校では、生徒がこれまでの学びの過程や今後の活動計画を教師や保護者の前で発表する「プレゼン型面談」を取り入れている。
地域とつながり成長する生徒たち
ーーー昨年度の始動から今年にかけて変化はありましたか?
岩本む:1年やってみて、いきなり自分でやりたいことをやるって難しいし、そこから一歩を踏み出すって結構エネルギーがいるなと。そこのハードルを下げるための仮説として、外部の方と連携して「こんなフィールドもあるよ」と見せることが大事ではないかと考えました。

寺井:慣れてる子はどんどんやっていきます。一方で、1年間かけてもやりたいことがわからないっていう子は、むぎさん(岩本)が提案してもらったり、連携している企業と「こんなことやるよ」と巻き込んでもらったり、新しい世界に飛び込んでいくのがスタートだと思います。「自分がやりたいことってなんだろうな」と体を動かして出てみることで、やりたいことを見つけて欲しいなと思います。
ーーー具体的に外との連携としてどのような活動をされていますか?
岩本む:たとえば、通信会社さんと連携して、地域の高齢者の方々にスマホの使い方を教える会を公民館で実施しましたね。他にも、山間部で酪農されている牧場さんと牧場の整備や休耕田(使われなくなった田んぼ)を再生しようという活動に参加して、ちょうど先日高校1年生が稲刈りを手伝っていました。あるいは、外で活動する場所と繋ぐこともしています。たとえば、ある生徒がピアノの練習をずっとしていて、人前に立つのが苦手な子だったのですが、まずは私の方から提案して、校内の発表会を設定したんです。そこで拍手をもらったのが大きな経験になったのか、学校の外に出て、6月には介護施設で演奏をしました。自分だけで弾いていたピアノが、誰かを笑顔にして感謝されるような活動につながっていったと思います。

ーーー他にも昨年度からの変化はありますか?
岩本む:金曜日に制服姿の生徒が学校の外を歩いているというのも、あまり見ない風景だと思います。昨年はいきなり出て行って、失敗して怒られたということも、実はありました。ですが、地元の方も優しく、「一緒にやっていこう」と言ってくださり、続けていくことができています。そういうふうな泥臭い失敗も、いわゆる「探究」の綺麗な側面だけでないワールドシフトらしさかもしれません。
ーーー生徒さんの変化で印象に残っていることはありますか?
岩本む:去年ワールドシフトをキックオフした日に活動に参加できなかった生徒がいたんです。そのときは、人とコミュニケーションをとらなければならないことに恐怖を感じていたのだと思うんです。ただ、その子は今3年生になって、公民館さんと一緒にカードゲームを作る活動をしています。最初は活動に難しさを感じていた生徒が、今は外の人に厳しいことを言われたり、タスクを与えられたり、でも褒めてもらいながら、活動を続けていると自己肯定感が高まっていく。今はもう「これもあれもやりたいです」となっているんですよね。

寺井:先日プレゼン型面談をした子で、「自分がこんなにコミュニケーション取れるとは思いませんでした」という子がいたんです。前期は牧場にお手伝いに行っていた生徒で、夏休みに一人旅をしたそうです。その旅の途中で相席した人と話したらしく、中学の時と比べてコミュニケーション能力が上がったと言っていて、そうやって身についた力に明確に気付くことができる生徒が増えていくのではないかと思いました。
周りの大人も一緒に作るワールドシフトに
ーーーこれらからワールドシフトではどのようなことをしていきたいですか?
寺井:教員も生徒にいろいろ提案していきたいなと思います。朝から、海に連れていくとか。
岩本む:スノーボードやってくださいよ!
寺井:そうですね。雪山に行ったことのない生徒たちもいるので、スノーボードに連れていくとかしてもいいかなと実は考えていて。そういう取り組みも、やってみないと結局よかったか、悪かったかもわからないですし。
岩本む:私は、最終的には学校がひとつの地域のハブになるといいなと思います。地域の皆さんだけでなく、教員や保護者など、周りの大人もみんなでワールドシフトを作っていきたいです。

ーーー最後に進路に悩む中学生や保護者の皆さんに一言お願いします。
岩本む:明誠高校をうまく活用してほしいです。保護者の方も地域の方も、一緒に学校をつくっていければと考えています。
寺井:これだけ世界が変化している中で、昭和型の勉強だけで本当に世の中がよくなるのかなと疑問に思っていたり、自分のやりたいことを学びたかったりする方を待っています。何より、「自分のやりたい勉強を高校からしたかった」と思う保護者の方の応援があるからこそ、この活動をしていけるのではないかと思っています。これからのワールドシフトにも乞うご期待です!
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MY FAVORITE
明誠高校のすきなところ
寺井 伸太郎
返事や挨拶に元気のあるところ
岩本 むぎ
変容のプロセス
最初は「何をすればいいの?」と戸惑っていた生徒たちが、地域に出て学びを吸収し、見違えるような行動力を発揮していく。その頼もしい変容のプロセスを、一番近くで一緒に喜べるところです。
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NEXT CHALLENGE
これから挑戦したいこと
寺井 伸太郎
教科書に載ってない授業に挑戦したい
岩本 むぎ
学校縁側化計画
学校をより地域にひらいていきたいです。WSを通じて、学校が地域にとって「縁側」のような存在となり、多世代が交わるワクワクするような化学反応の連鎖を、益田に起こしていきたいです。

